分析の原理
熱伝導率計の原理
熱伝導率計ってどんな装置?
私たちの身の回りには、たくさんの物があります。それらの物には、熱を伝えやすい物と熱を伝え難い物とがあり、それぞれの用途に応じて私たちは適切な材料を選択して使用します。その材料の熱伝導率は単に理学的・工学的にのみ重要であるだけでなく、私たちの日常生活においても密接に関わる基礎的な物理量です。
熱伝導率ってなに?
熱伝導率 λ :
熱の伝わりやすさ
一定の温度勾配があるときに流れる熱流密度
単位 :
W/m・K(ワット/メーター ケルビン)
※SI単位になる以前は、Kcal/mh℃ での表記が多い
どんな装置があるの?
伝導率測定装置には、温度差および熱流から求める定常法と加熱線の発熱量と温度上昇から求める非定常法があります。
KEM製熱伝導率計は、非定常法に分類されます。
迅速熱伝導率計
センサを試料の上に1分間置くだけで熱伝導率が測定できます。
簡単な操作で再現性良く測定ができます。
主に、断熱材、ガラス、樹脂やゴムなどの熱伝導率が低いものに使用します。
迅速熱伝導率計 QTM-710/700 測定原理
QTM-710/700は非定常法細線加熱法という方法で熱伝導率を測定しています。
プローブ(センサ)は、直線状に張られた加熱線と熱電対により構成されています。
加熱線に一定電流を通じると熱が発生し、加熱線の温度は上昇します。熱伝導率の高い試料(セラミックスなど)では、熱は急速に移動し試料側に逃げてゆくために加熱線の温度は小さくなります。逆に熱伝導率が低い試料(断熱材など)では、熱が逃げ難いために加熱線の温度は大きく上昇します。このように加熱線の温度上昇は試料の熱伝導率に関係し、下記の式で現されます。すなわち、試料の熱伝導率は時間軸を対数目盛りにした昇温グラフの傾きから求めることができます。
レーザーフラッシュ法熱物性測定装置 LFA-502
試料を瞬時に加熱するだけで、熱拡散率/比熱がわかります。熱伝導率は計算にて算出します。一般的に普及している測定法ですが、近年熱拡散率測定技術の標準化にともない従来機器と比較してより高度なものになりました。 従来DSC(示差走査熱量計)に頼っていた比熱測定を精度良く同時に測定できます(「参照標準物質」と同時に均一加熱する「示差方式」を採用)。
高熱伝導率で薄い試料(銅、アルミニウム、窒化アルミニウムなど)についても精度良く測定できます。
レーザーフラッシュ法熱物性測定装置 LFA-502 測定原理
レーザーフラッシュ法において、図1に示すように直径5~10mm、厚さ1~3mm程度の円板状試料の表面をパルス幅0.5ms以下のレーザー光により瞬間的に均一加熱し、試料裏面の温度変化を測定します。 断熱条件を仮定した理論解によれば試料裏面温度は図2のように上昇し、最大温度上昇(ΔT)後、冷却曲線となります。従来の解析では、熱拡散率αはΔT/2 に達するまでの時間t 1/2からα=0.1388d²/t 1/2(dは試料の厚さ)により算出します。(ハーフタイム法)
機種別の特長
型式 | QTM-710/700 | LFA-502 |
---|---|---|
測定原理 | 熱線プローブ法 | レーザーフラッシュ法 |
規格 | JIS R2618 耐火煉瓦の熱伝導率測定法の改良測定法 | JIS R1611 セラミックスの熱拡散率測定 |
測定項目 | 熱伝導率 | 熱拡散率・比熱・熱伝導率(計算) |
対象サンプル | ゴム、プラスチック、ガラス、粉体 | 金属、合金、セラミックス、炭素系素材 |
試料サイズ | 100×50mm以上 厚さ 10mm以上 (フィルム、シート、うす板状は、 およそ1W/(m K)に対して1mm以上の厚さが必要です) |
Φ5、□5、または、Φ10 厚さ 1~3mm |
熱伝導率 | 0.03~12W/(m K) | 0.2~400W/(m K) |
測定精度 | レファレンスプレートに対して表示値の±5%以内(室温) | 熱拡散率:±5%以内 比熱:±5%以内 |
再現性 | レファレンスプレート測定時3%(室温) | CV値で5%以内 |
測定時間 | 60秒 | 1秒以内 |
測定温度範囲 | 5~35℃ | 室温~1500℃ |
特長 | 試料の表面にセンサを押し当て、60秒で測定できます。 上記サイズ以上であれば試料の加工は必要なし。 |
熱拡散率と比熱が同時に測定できます。 熱伝導率の計算精度と信頼性が向上。 |
どんな用途に使われているの?
- ゴムや樹脂などに熱伝導性のよいものを加えて、放熱促進材料の開発
- 塗料材料の熱特性評価
- 焼け具合からおいしいパンの製造方法の開発
- 食材の解凍時間の算出
- ダンボールや紙コップなどの素材による保温特性の評価
- たばこの巻紙の熱特性評価
- 自動車ハンドルグリップ用革製品の温冷感評価
- ガスケットの断熱性評価
- 窒化アルミニウムなどの高熱伝導材料の開発
- 手足の温冷感評価
- 核燃料放射物の熱的評価
- 地震予知における土質の調査
- 液化天然ガスの移送条件の調査
- 両面テープなどの包装材料の開発
他にもいろいろな所で「熱伝導率」は測定されています。主に【材料開発部門】、【品質管理部門】で使われます。
代表的な物質の熱伝導率〔W/(m K)〕
水 | 0.594 |
---|---|
木材 | 0.087~0.15 |
コンクリート | 0.8~1.39 |
発泡ポリエチレン | 0.037 |
シリコーンゴム | 0.22 |
石英ガラス | 1.4 |
ジルコニア | 3 |
ステンレス | 14 |
鉄 | 67.4 |
金 | 295 |
銅 | 400 |