分析の原理
熱流センサの原理
熱流センサの検出原理
熱流は、平面状微小熱抵抗体を熱流(熱エネルギー)が貫通するとき、熱流の大きさに比例した熱抵抗体の両面に生じる温度差を検出することによって測定できます。
図1のように、放熱面に熱伝導率λ(W/mK)、厚みd(m)の薄い板を取り付けたとすると、定常状態に達してからのちにこの薄い板を貫通して流れる熱流密度Q(W/m²)は次の式で求められます。
Q=(λ/d)・⊿T
⊿Tを薄い板の表裏両面間の温度差とすると、λおよびdが既知であれば⊿Tを測定することによってQを求めることができます。
熱流センサに熱伝導率の小さい熱抵抗体を用い、差動熱電対も一対だけでなく接点数を多数とすることで高感度が得られます。
標準熱流発生装置
メインヒータに与えられた電圧・ 電流から得られる正確な発生熱量と放熱面積から熱流束(W/m²)が得られます。 放熱面以外に熱の流入出を防ぐ ため熱流センサで熱流を監視しながらバックアップヒータを発熱させることで完全断熱を実現し 放熱面積を保証しています。
例えば100W/m2の標準熱流発生面に熱流センサを取り付けた場合、熱流センサの出力Fが2mVであれば
Q=α・Fにおいて
100W/m²=α・2mV
α=50W/m²/mV (センサ定数)
このセンサ定数を使って測定したとき
F=10mVであったとき
Q=α・F=50×10=500W/m²
熱流センサの校正
前述のように標準熱流発生装置により熱流センサの校正を行い、センサ定数αを求めています。
実際には、センサ定数は熱流比例項のA値とシフト項のB値をもっていてなおかつB値は温度の関数になっています。
京都電子工業では恒温室内に設置、管理された標準熱流発生装置によって全てのセンサのA定数、B定数を値付けしています。
おおよその熱流値
項目 | 熱流(W/m²) |
---|---|
人間の身体 | 80~90 |
太陽熱 | 460 |
冷蔵庫 | 17~23 |
合金鉄電気炉 | 2300~3500 |
高炉 | 3500~4600 |
建築物 | 6~12 |
保温した蒸気配管 | 350~460 |
地熱(通常) | 0.042 |
λ=2
Q=(λ・ΔT)/d
=2・(1550-50)/1
=3000
熱流測定の誤差について
熱流計測はセンサを対象物に接触させるだけで簡単に熱流値が得られます。しかし信頼性のある値を得るためには操作上のいくつかの注意点があります。
誤差の要因として次の点が考えられます。
1)センサの取付
2)風
3)放射率
4)設置面とセンサの放射率の差
5)埋設形センサでの埋設物との熱伝導率の違い
熱流測定の誤差について【センサの取付】
貼り付けタイプのセンサは対象物とセンサの間に空気層ができないように貼り付けます。
貼り付けに使用する接着シートは京都電子工業で校正された「HA2-H」あるいは「HA2-L 」を使用してください。
熱流測定の誤差について【風】
風によって熱流が変化することは一般によくみられることですがこれは境膜抵抗が変わることに因っています。
過度的な変化に対してセンサは過敏に応答するため実際の熱流変化より大きな変動を示します。
したがって測定器には指示の平均化機能が付いています。また定常風(あるいは平均風速)に対して実際の熱流と異なる値を示します。
これは測定対象物の熱伝達係数とセンサの熱伝達係数との差によるものです。
一般的にはセンサの熱伝達係数のほうが大きいため指示が大きくなります。
KEMの熱流センサ
汎用低熱流用センサ
【特長】
10W/m²程度の低熱流も高感度、高精度に測定が可能。
フレキシビリティがあり湾曲面への取り付けが容易。
【用途】
低熱流用
保温配管の放散熱量の測定、建築物の熱特性試験(省エネ対策)、
断熱材および土壌などに埋設が可能。
低熱流用センサ
【特長】
TR形熱流センサと同等性能。
TR形熱流センサでは対応できない小スペースでの測定に対応。
【用途】
低熱流用
生体や小型機械部品などの放熱測定。
表面形高熱流用センサ
【特長】
500℃の高温表面でも連続使用が可能。
【用途】
省エネルギー対策から炉の操業管理まで幅広い使用用途。
埋設形高熱流用センサ
【特長】
750℃の高温部での連続使用が可能。
【用途】
埋設形高熱流用炉材、保温材などの固体内に埋設し、それらの固体内を貫流する熱量を測定。